千のなかの一、一のなかの千 |
八月十四日
朝焼けの前、午前三時にキッチンで千春さんと会う。
「喧嘩したね」
「喧嘩したねー」
詳細は過去記事をどうぞ、と言うわけで麦茶飲みながらしばらく話す。部屋に帰って、『駅馬車』少し見て眠る。朝焼けだったのかどうだか知らない。
午前八時に起きる。週一のちょっと大掛かりな掃除して、近所の寺へ。
最近よく話題に出ている——詳細は過去記事をどうぞ——、「お殿様」の菩提寺に線香上げにゆく。
和尚さん(おそらく)は眼鏡の好人物だった。
御本尊を拝んでから、その裏の位牌へ。
SF的に位牌が並んでいる。僕のSF観は歪んでるのであんまりSFと言う単語に拘泥しないでください。
お殿様に手を合わせる。
「どうか安らかに千春さんを守ってください守ってくださいこれブログのネタになるけど一度やったよなあらためて言語とはウイルスだがこうやって文として成立してしまうことにどうしようもない嘘臭さを感じてしまうがそれなら僕の人生に真実はあったのだろうかまあ二番煎じのネタでもいいなよし」
と言うところで顔を上げる。はい、祈りについての考究第二弾でした。(ネタ枯れとも言う)。
「お殿様は、幾つくらいでお亡くなりになったのですか」
「さあ……。よくわからないですね」
和尚さんは玄関まで見送ってくれ、
「あ、そこ段差、気をつけて。骨折ったひともいます」
「僕は、四十六年で七回折ってます」
「四十六年で、七回」
「はい」
「ははははは」
門を出たあと、千春さんが、
「お坊さんって、本当に作務衣着るんだねー」
と感心していたが、感心のポイントは違うだろ。千春さんは作務衣マニアです。
そんな彼女、作品集の感想が毎日のように届く。
「入ってもいいですか」「いいですよー」ちつ 千春
の句が話題を呼んでいるらしい、おそらく。
「僕は《中八の大祐》らしいが、どうやらあなたは《ちつの千春》の二つ名になりそうだ」
「最強の夫婦じゃん!」
と、言ったあと、彼女はしばらくして、
「やっぱりそれはどうかと思う……」
と、ぼそり、と呟いた。馬鹿な夫婦であることは、少なくとも僕が馬鹿なことは間違いない。
そんな千春さんの作品集、『てとてと』発売中です。ご興味のある方ご連絡ください。
何で今更? とは思うがチャンドラー『プレイバック』(村上春樹訳)読んでる。今夜は『駅馬車』をもう一回観られるだろうか。
なぜか仏壇化してしまった本棚に、今夜もお供えする。明日でお盆も終わり。
有人の月浮かぶなり熱い空 大祐
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