第140回毎週web句会の選をしました(捻りのないタイトル)

 メリークリスマス、川合大祐っす。
 Twitterで週に六日から七日、日に七句くらい写真つき川柳をあげていて、それで本当に、本当に一部の方からなんだけど、「君、いいねえ」と言ってもらえているようなんですが(いいよね、言ってもらってるよね)、私、全然「いいね」な川柳人じゃないです。
 ここだけの話(別に職場でもスタバでも柔術道場でもお話ししてもらっていいんですが)、私、川柳が下手なんです。
 一瞬びっくりしたでしょ。これ謙遜でも何でもないです。私、「うまい」川柳を読むたび、「ああ、これ自分には作れないなあ」と最近は諦めを通り越して己の下手さに甘えてます。しょうがない奴だ。そんなわけで、飛び道具に頼るんですね。「中八がそんなに憎いかさあ殺せ」とか「…早送り…二人は……豚になり終」とか。そういうのを、「いいね」と言ってくれる人もいらっしゃるということであります。ありますって何故のらくろ。
 そんなわけで、私は川柳のすごい人ではまるでないので、今回森山文切大人から、第140回毎週web句会の選者をお願いされたときは迷いました。というのは噓で、二つ返事でほいほい引き受けました。すごいお調子者なのです。
 で、皆さんの句が詰まったExcelファイルが届いたわけですが、113句あって、パソコンで見てると頭くらくらとしてきました。20世紀の人間です。おっかしいなー、1999年で終わるって言ってたじゃないかよー、など見当違いなつぶやきをしても、締切はやってくる。あわわわわどどどうしよう選なんてと五七五で動揺しつつ、結局印字して紙と格闘しました。ええ昭和の人間ですとも。ダン・ガードA知ってますとも。
 という感じでプリンタ用紙にシャーペンで印を付けていったのですが、とにかく圧倒されました。え、こんな上手い人たちいるの? 自分の存在意義なんてはじめっからなかったけどやっぱないじゃん? もうみんな天にしましょうよ? というノリで○付けていったら、あっという間に制限句数超えてました。
 そんなわけで削ったら、今度は少なくなりすぎて、やっぱり拾い直して、そしたらまたオーバーして、削って、オーバーして、以下繰り返し。
 ということでこのブログでは、抜こうかどうしようか、凄まじく悩んだ句について書こうと思います。最初に言っておくべきでしたが、入選された方の句についてはまたどこかで書きますね。ここまで駄言につきあわせて、ほとんど詐欺の領域であります。次は裁判所で会はう。いいかげんにしなさい。大祐、行きます。乗るんだったらズゴックに乗りたい。ええ80年代の人間です。でもガンプラは作らなかった。ええかげんにしなさい。
 なお、到着順です。

 で、採るかどうか迷った句は、「すごく面白いんだけど、もっと面白くなる可能性がある」ように感じた句です。だから抜かれなかったのは句にそれだけポテンシャルがあると思って下さい。むしろ抜かなかったことで褒めたつもりだったんですが、よく考えるとそれでは伝わらないのでこうして書いてます。

  玄関を開けたら蝶の事故現場

 綺麗なんですよね、綺麗で残酷。世界観良いなあ、と印象的でした。「蝶の事故現場」なんて並みの人が出せる言葉じゃないですしね。でも逆に、「蝶の事故現場」が良すぎたから、「玄関を開けたら」がもっと工夫の仕方があるんじゃないかと感じたんですね。これももう少しで凄くなる句でした。

  父ちゃんのちんちんボクを眩しがる
 
 これ迷った。とういうか迷いますよね。いやこの言葉を使える作者を尊敬したんだけど、「父ちゃんの/ちんちん/ボクを/眩しがる」だと、主語と目的語がやや凸凹している感じがして(あ、だからちんちんなのか。今きづきました)、整理したらすばらしいものになるんじゃないかと思ってしまいました。その時は。でもこれやっぱり良い句ですね。すみません。

  バス停で鯨が来たという知らせ

 佳作でもおかしくない、といえばこの句もそう。この句は一番最後まで悩んだんじゃないかな。最終的に、「バス停で」の「で」が説明的かなと思って落としたんですが、「に」にすると安いしなあ。ただ、「バス停」に「鯨が来た」という驚きを伝えるのに、「で」が邪魔をしているような気がしたんですよ、選ぶときの私には。でもあらためて読んでみると、これ何て良い句なんだろうと思います。完成度が高すぎて、こちらが求めるものがどうしても高すぎになってしまったのかもしれません。いずれにせよこの句を取れなかったのは今でも後悔になってます。私の不明です。これは謝ります。ごめんなさい。
 この没は、そしてこの句はどうか誇りにして下さい。

  みつけようどうぶつえんの密猟者

 だからこれも良すぎるんですね。良すぎるから過剰に理想を求めてしまうというか。「みつけようどうぶつえんの」というひらがな書きが凄い。ただ、「どうぶつえんの密猟者」は完成されすぎている気がしたのです。もっと外れたことを言ってもいいんじゃないかと。言いがかりですね。ごめんなさい。


  何の略ポテトサラダじゃないのなら

 深いんですよね。言語論に射程を定めている。「略」といいながらきちんと略されているし。ただ、「ポテサラ」とすぐに出てしまうところが惜しかったのです。もっとこう、「一瞬わからないけど、よく考えるとこれは凄い」言葉を使っていたら、この句は本当に凄くなると思いました。この句も可能性がありすぎて抜かなかったパターンですね。

  カマキリに廃刀令を説くオケラ

 これも面白かったんですよ。最後まで迷った句のひとつです。「廃刀令」ってなかなか出てくる言葉じゃないですよね。ただ、「オケラ」が「カマキリ」に説いていると、それは何か整いすぎているような感じを受けたんです。「廃刀令」が尖っているだけに、余計に。でも、あとひと味足せば、もっと面白くなる句だと思いました。

 と、まあこんな感じで迷ったわけです。例として6句あげましたが、これ以外にも迷った句はたくさんありました。没になった方、どうか自信を持って下さい。私の目が節穴なだけです。前も言ったんだけど、みんなに「天」を付けたい。でもルールはルール。限りある数に選ばなきゃいけないんですよ。などと言うつまんねえ大人になっちまいましたが、そんな尾崎豊はどうでもよろしい。
 あ、入選句がつまらないと言ってるわけではありませんからね? 入選した句はどこに出しても輝く句だと確信しています。
(それにしても「松ぼっくりオーバーワークだったのだ/森山文切」にはやられましたわ)
 
 ギャグでも何でもないのですが、川柳の未来は明るい。
 そう思ったのは、初めてでした。
 この体験をさせてくれた、文切さん、そしてみなさんに心から感謝します。

 ありがとうございました。

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