『転生したら昭和中堅レスラーだった件』についての熱力学の発動

高度に発達した情念量は、科学技術と区別がつかない


十一月十五日


 ぐあああああああっっっっっっ!!!!
 俺は凄いモノを観てしまった!!
 なんていう前振りはもういらん! ただ書く! 書く! 書く! 「虎よ!虎よ!」って名乗ってるブログだから書くしか無い! 俺にできることはそれだけだ! 『転生したら昭和中堅レスラーだった件』徳光康之先生、凄すぎたああああ!
 何が凄いかって、プロレス漫画、格闘漫画としてもう今の世界ではダントツだ。正直この現在世界で進行中の「格闘漫画」なんて、言っちゃあ悪いがみんなシットボーイズ! 画面隅々効果線一本一本までみなぎる情熱、それを支える冷静な計算、格闘者心理の機微、すべてにおいてパーフェクトを軽く超えてしまっている。
 
 だが!
 あえてここは注目したい!
 この『転レス』(俺が勝手に作った略語、なんか別のが定着してたら許せ)、ほんとに鳥肌立ったのは、これが壮絶な「SF」であることだ!
 いやもうね、SFとして最高なのよ。SFってなんか「出鱈目なことを適当に言ってるだけじゃん……」とかいう認識、そこのあなた! そこのあなたあなたあなたもちょっとは持ってるでしょ。

 ぜんぜんちがーう!

 SFがSFとして輝くためには、如何に「現実」と表裏一体しているかにかかってる。現実に存在するリアルを突き詰めて行って、そのリアルを超えたただ一点をぶち抜くように「サイエンス・フィクション」のフィクションが成立するんだよ。
 その意味でこの『転レス』はリアルだ。なんせ昭和新日(作中では別の名前だがもう勢いでモデル名を書く。登場人物も以下同じ)の、昭和56年4月23日がこれほどまでにっていうほど緻密に作り込まれていて、そこを大爆発の怒涛の展開に引き摺り込んでく。
 この蔵前国技館(昔は蔵前にあったのですよ、スモー・アリーナ)の一夜に、ありとあらゆる歴史が超凝縮されて、いいの? こんなことやっちゃっていいの? 虎仮面がこんなことになってハンセンがあんなことしてブッチャーがガマ・オテナ先生つっていいの? て気づいたら陽が沈んで「今」じぶんはどこにいるのだろう? ってヘヴィにスリップしちゃいましたよ。

 正直、舐めてました。いや徳光先生は尊敬してるんですけどね、ケンゴに転生、って出オチかなとか勝手な先入観に甘えて、ぬるーいギャグ漫画かと思っていたら、ガチのどSFで超ギャグ漫画でした。
 熱いよ。熱いんだよともかく。もうこんな文章読んでないでみんなAmazonポチれ! さもなくば本屋に兎跳びで跳んでけ! 体に悪いとか気にすんな! 読めばどうせ頭のほうが持ってかれるぞ!
 いやーしかし、『最狂超プロレスファン烈伝』の3巻書き下ろしの並行宇宙編、第4巻の終末編を読んだときに、これ以上のプロレスSFは無いかと思ったが、ごめんなさい、プロレスSFどころかこの『転レス』、日本SF大賞取らなきゃおかしいですよ!
 さっきも言ったけど、SF、特にハードSFでは現実を徹頭徹尾細部描き込んで、「ここぞ」と言う一点をフィクションに突破するわけだけど、この命懸けの跳躍(て懐かしいフレーズだ)って、何に似てるかって言ったらそれもう「プロレス」でしかないわけですよ。
 本書でもどれだけプロレスが「リアルな」闘いであるか、お腹はち切れそうなほど描写されるわけだけど、このお腹大爆発が、SF大爆発となってもう続き滅茶苦茶気になる! 1巻の最後、ケンゴと相対した練習生の「あの選手」はどうなる⁉︎ ていうかこの物語どうなんの⁉︎ 真剣にナックルズ定期購読しようかと思ってる。うわー、こんなに漫画引き込まれたの何年ぶりだろ。
 って思ってしまうくらい、「漫画」とか「SF」あるいは「フィクション」というものを超えたメタ・フィクショナルな感動でぶん殴って来るわけですよ。ケンゴや佐山のやろうとしていることが、もはや「プロレス」というジャンルを超えたものになりつつあるように(マジで宇宙規模の話っすから)。
 だから、SFである以上に、創作物として超越した次元にあるわけで、こんな「超えたもの」を描ける徳光先生とは、「神の視点」を持っているとしか……はっ、まさか、転生者!

 ともかく、俺の中では『刃牙』も『エヴァンゲリオン』も何それ美味しいの? になってしまうくらい凄い作品なわけです、『転生したら昭和中堅レスラーだった件』。
 いろんな細かい紹介とか一切無視して書いた文章だけど、情報量と情熱量が多すぎて処理できん。佐山前田高田が仲良くしてるとこ見られるだけでもグッときます。「最近のプロレスがつまらん……」って言うより「最近のプロレスおもしれー」って言ってる人にこそ読んでほしいです。すんません今頭の中三沢で一杯です。ともかくも、イナズマっ!
 
追記
 佐山聡のリアルをここまで描写したテクストは他に存在しなかったのでは無いか。それだけでもこの作品は歴史に残る。断言。


#転生したら昭和中堅プロレスラーだった件 #徳光康之

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