西瓜糖の日


 精神科に通院の日。
 統合失調症である。
 この5年くらい、ゼプリオン、という筋肉注射を打っている。一回の注射で、薬成分の血中濃度が、28日間ほぼ一定に保たれるのだそうだ。
 だから、4週間にいちど、かならず隣の隣の市まで運転してゆく。
 病院のシステムは電子化されていて、受付をすると「受付番号」をもらい、その数字で一切が進行する。名前を呼ばれることはない。ある時期から思いついて、Twitter で #病院の受付番号を阪神タイガースの背番号に対応させてみる というタグ遊びをしているが、他の誰もやっているところを見たことがない。
 ちなみに今日は50番。青柳投手だった。
 診察のあと、注射する。
 注射がうまい人と下手な人とというのは、確実に存在して、今日は「ぶきゅっ」と音がするくらい針を突き刺して、
「あ、ごめーん。いま、びくって言った。痛かったでしょ。血管に打っちゃったー」
 と言ってもう一度やりなおしをするひとだった。人間的には好きです。
「手の先ぴりぴりしますか?」
 と必ず訊かれる。神経に触っているかどうか確認するのである。神経に障るかどうか訊いているわけではない。いちど、その「ぴりぴりする」という体験をしてみたいのだが、あいにくと機会に恵まれたことはない。
 次回の(28日後の)予約票を渡され、会計を待つあいだ、テレビは芸能人が百円ショップを回っておしゃれなコーディネートを、とかそういうのばかりやっている。
 精算して、処方箋をもらい、隣の薬局で薬が出るのを待つ。やはりテレビは、芸能人が目黒区をめぐっておしゃれな鯛焼き屋さんを、とかそういうのばかりやっている。
 今日は念のため30日分の常用薬と、不眠時用の頓服を10日分受け取った。あ、安定剤ももらえばよかったかな、と思ったのは帰りの車の中である。
 遅い昼食で、すき家が自動支払いになっていることに驚き、遅れて仕事行って、早めに帰って、病院に行く前につくっておいたカレーをふたりで食べた。ターメリックが、もうすぐ終わりそうだ。
 
 精神科に通院の日。
 そんな、何でもない一日。

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