日帰り温泉「高遠温泉 さくらの湯」に行ってきた。
 もう一昨日のことになるが、書いておかないと永遠に書かなそうだから書く。
 大阪行きも川柳論も、今年中には何とかなるだろう。なるといいなあ(希望)。
 そもそも、この日に行く予定ではなかったのである。

 自分が荒んでいた。
 愚痴はこぼしたくないけれど、どの方角に進んでも、自分がばらばらに壊れていくような、心もとない不安と、憔悴に疲れきっていた。
 川柳なんか、書けやしない。
 それが日曜日。
 ふと、ちーさんが「温泉行こうよ!」と言い出した。
 長野県はこういう土地柄なので、温泉は湯水のごとく湧いて出る(つまらないギャグです)。しかしその提案はあまりに唐突でないか? とも思ったが、団地の風呂は浴槽にお湯を貯めておくだけ、沸かすことも追い炊きももちろんできない。冬はきびしい。きび椎名林檎。思いついたので言ってみた。そこ、あんまり深く考えないように。
「ねえねえ、いつなら行けそう?」
「そうだなあ・・・・・・水曜日なら仕事の後、何とかなりそうかな・・・・・・」
「じゃ水曜日ね! 楽しみ!」

 で、火曜日。
 僕は通院の日だった。
 前にも書いたが、二十八日に一度筋肉注射を打つ。
 どうもその直前、調子を崩す。
 相も変わらず、「もう、おしまいだ・・・・・・」状態で靴を履いていた。
「やっぱ、温泉、今日行こうよ!」
 とちーさんが部屋から出て来て、僕は、「あ、いいんじゃない」と上の空に答え、病院で形ばかりの問診と注射と処方箋をもらい、それで元気百倍になるわけもなく、薬が効いてくるためには一晩は最低かかる。
「あ、空が青いなあ」
 と思った。

 遅れて仕事行って、終わると冬の谷は暗い。
 暗闇坂をのぼって団地に帰ると、ちーさんはお風呂セットを用意していた。自然食品にこだわるひとなので、とうぜん石鹸とシャンプーも滅多に売っていないナチュラルなものでないと駄目なのである。ちなみに、結婚してから僕も自然派シャンプーを使うようになって「ね、髪の量がふえたでしょ」と言われるのだが、よくわからない。というかへるな髪。話はわざとずらした。
 車を飛ばす、夜の街道。ちなみにナイスロードというナイスな愛称がついている。
「だいたい、このあたりのような気がするな・・・・・・」
「うん、だと思う」
「実は、『さくらの湯』、いちども行ったことないんだ」
「えー、意外!」
 母方の一家は高遠に住んでいた。伊那に移住してからも、祖父と母は高遠に出勤していた。母の最後の方は、胎内に僕が居た、らしい。

「さくらの湯」は、それなりに大きな建物だった。
「いや・・・・・・これ、インダストリアルインテリアじゃん・・・・・・」
 たまたまそうなっただけなんでしょうが、格好はよかったです。
 ぎりぎりで食事食べて(休憩所でカレーとかそばとか食べられるのです)、僕は少し川柳を書いて、遅れて風呂に行った。別に混浴ではありません。
 筋肉質の男性もお腹がぷっくり出た男性もいた。鏡で自分を見たら、少しだけ筋肉がついた、ような。あー、小橋建太になりたい。というとちーさんに「い や だ」と言われるのが、いつも言っている。小橋がわからない人は検索どうぞ。
 浴場から出るとちーさんと鉢合わせ。ジュースをおごる。僕は自販のあいすを喰ってしまう。さよなら小橋ボディ。それでもセブンティーンアイスだったから、十七音字をやれという啓示だよね! たぶんちがうけど。

 帰り道、ちーさんに運転してもらう。
 伊那市の灯りが迫ってくる。

「たのしいことを、しようね」
「ああ」
「いっぱい、たのしいことを、しようね」
「あいよ」

 明日は来る。
 温泉がどんなお湯だったか、記録には何も残されていない。
 ただ、フロントのおじさんが「誰もネットで反応してくれないんですよー。どんどん書いて下さいー」と嘆いていたので、高遠さくらの湯、いい温泉だったと無償でステマする。
 いい温泉で、そこそこにいい一日だった。

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