ポストマン


 葉書が不思議でならなかった。
 なぜ、単なる紙切れが、遠く離れた町に届くのか。
 それ以上に、なぜ葉書に「どうでもいいこと」が書かれているのか。
 この社会にはすべてを掌握する機関があって、そこが僕らの住所と名前と、もっと言えば僕の恥を丸ごと知っているのだと考えた。
 ゆえに、葉書には「どうでもいいこと」を書くのだと考えた。
 それでも、その「どうでもいいこと」に救われる日もあったのだと、曇りの夜に思う。

 だから、僕も葉書を出してみようと思ったが、部家に一枚も白紙の葉書がないのだった。

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