ひとである限り、人間には進化(退化)しない |
密室があるとする。
「あるとする」ではなく、密室があった。
扉も、窓も、壁の隙間もない、完璧に外界から遮断された部屋。
だが、僕たちは密室の中に何があるか、想像・・・・・・空想・・・・・・妄想することができる。
丸美屋の茶漬け袋か、全自動草刈り機か、まだら模様の兎二匹か。
ここで、想像されることによって、密室は外界とつながっている。
空想は、密室に侵入する。
妄想は、すでに密室を同化させてしまっている。誰に? という点があやふやなのが、妄想たるゆえんかもしれないが。
いずれにせよ、完璧な遮断は、存在しない。
「存在しないものは存在しない」という、良くあるレトリックともやや違う。
いっけん、僕らはみずからのなかに、完璧な密室を抱えているからだ。
餅が念動力で飴を曲げ・・・・・・色違いの皿が愛を囁きあい・・・・・・VHSテープが水牛に粉砕されてゆく・・・・・・。
そんな密室の中のことを、誰が知るというのだろう?
だが、いま、僕ら、と書いてしまった。
「僕ら」と言い切れるところで、密室はすでに開かれている。僕らの・・・・・・ら、という・・・・・・接続。どんな遮断よりも、さみしい接続。
だから僕は、日々あらたな密室をつくる。
この部屋に、誰か来てくれないかと願いながら。
寒いから、今夜は扉を閉めにゆこう。
コメント
コメントを投稿