フィールド・オブ・ドリームス

政治と野球の話はするな。愚民をさらに愚民に

 雪が降った。アピタに行く。
 名古屋が拠点のデパートだから、中日ドラゴンズを全店かけて推している。
 今日も聞こえる「燃え〜よドラゴンズ〜」という水木一郎兄貴の熱唱。
 ふと気がつくと、「とらーをたいじしてー」と鼻歌をうたっていて、いやいや洗脳されてたまるものか、僕は阪神ファン、と気をとりなすが、長野県で阪神タイガースが好き! というのはつらいものがある。
 まず、巨人ファンが圧倒的に多い。これは一部の地域を除いて全国的な傾向だからしかたない。
 その次に多いのが中日ファンなのである。中日スポーツとか売ってるしね。コンビニの新聞コーナーに行くと、球団は巨人と中日しか「無い」ような錯覚に陥る。
(大阪に行ったとき、ほんとにどの新聞もタイガースが一面で、くらくらした)
 あー、もう堂上ファンになっちゃおうかな、とアピタに来るたび思う。噓です。そんなに思ってません。
 だけれど、この建造物の中に阪神ファンはひとりだけなのだろうな、とさびしい。
 だけど待てよ、と思う。
 このアピタの客、従業員すべて、阪神タイガースファンでも不思議はないのじゃないか。
 それを言わない(大人だから)、言えない(大人だから)、日々のなか、「燃えよドラゴンズ」だけが延々と流れているのではないか。
 だとしたら、個人の内面、というものは集合意識体に対して、つねに垂直であるのかもしれない。
 話しかければ良かったのかもしれないな、
「あなたは阪神タイガースという球団のファンですか?」
 
 しかし。
 フードコートでソフトクリームを買った。「200円です」という店員さんの言葉が、今日、他人との会話のすべてだった。
 ソフトと水を口にして、川柳書いて帰った。
 誰しも心に秘めた「阪神タイガース」がある。雪は雨になっていた。

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