ヴァーミリオン・サンズ

 
人間的な、余りに非人間的な


 夏至。

「あ、あ、あ」
 と嘆じてしまう。

 何も思わない、と言うのは例によって嘘だ。今この瞬間、一年で一番日照時間が長い今日を、たまらなく愛しく悲しく笑ってしまうほどに怯えながら思っている。
 
 こんなことは生まれて初めてだ。

 何が自分に起きているのか、表層的な解釈はたやすい。環境/自己/世界全体の変化あるいは不動であることに気付いてしまった/忘れやすくなった、etc。
 なかでも、自分が四十代も半ばを過ぎ、「時間的な区切り」と言うものに鋭敏になっている、といった自己解説は、ある程度までは説得力があるだろう(誰に対して? 無論、自分に対して)。

 だが、あえて自分に嘘をつきたい/本当のことを言いたい/どうでもいいことをしてしまいたい、と言う欲望に身を任せるのならば、僕はただ、この夏至の日が好きだ。

 生まれて初めてと言った。生まれて初めて、この夏至の日を好きだと言おう。

 誰に対してでもなく、ましてや「夏至」そのもの(そんなものがあるとして)に対してでもなく、自分でもなく、自分より小さいものでも超越したものでもなく、ただ、

「あ、あ、あ」

 と言う感嘆詞に対して、僕は正直に好きだと言いたいのだ。

 夏至。

 18:50。まだ陽は暮れない。追伸。あなたはどこでこの日を過ごしていますか?

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