星を継ぐ者

すべての猫が灰色にも見えない夜。存在していない可能性

 

八月三十一日

 月曜日。

 八月が終わる。慣習によって、この日に特別な思い入れがない。

 長野県は、八月三十一日が夏休みの終わりの日「ではない」のである。大体お盆過ぎ、八月十七日あたりには連休が終わっていた。はじまるのも七月二十八日あたりだったから、東京地方(他の地方もかもしれないが)に比べて、圧倒的に日数が少ない。

 その代わりかどうかわからないが、秋に五日ほど(「稲刈り休み」と呼ばれていた)、二月に一週間ほど(「寒中休み」と呼ばれる)、連休があった。

 何しろ農村の県である。山だらけで、平野と見れば田畑にするか工場にするしかない。本来オリンピックなんかやれるスペースは無いんである。曙、寒そうでしたね。もうこのネタ通じねえんだろうな。

 それはともかく、農業が大事だから稲刈り休み。で、半端ない寒さ(「氷の世界」がぬるい、と初聴で思った。と雪で身動きとれないから関中休み。

 春・夏・秋・正月・冬、と連休があることになる。おお、句集っぽいぞ。別に喜ぶことではない。ただ、テレビアニメで「あー八月三十一日だあー。宿題やってないー」と主人公がほざくたび(アニメの主人公は宿題を溜める。まあ、のび太と思えば大体正確な把握になる)、「こちとらとっくに苦行はじまってるわ! 牛糞と野焼きの臭いにつつまれた生活をしてみい!」と訳のわからないキレ方をしていた。

 逆に「あーあ、どうして秋休みがないのかなあー」と言えば(のび太と思えば以下略)、「えー、なんで秋に休みがないのー。うちには稲刈りする田んぼも買えなかったけどさー」とか軽く不可思議であり、どこかに優越感を感じてた。

「だから、まあ、夏休みが少ないんだな。夏涼しいし」

 と小学中学年くらいには悟っていた。で学業を終えて色々あって「基本的に休みのない」今の状態に突入してるわけだが(凄まじいまでに半生記、端折った)、今年はまあ無茶苦茶な年だから例外としても、現代の長野県っ子、稲刈り休みも寒中休みもないそうじゃん!

 しかも夏休みの量、僕らの代と変わらないそう。何それ、まさに夏闇でしょ! タイプミスしたらぴったりの漢字が出てきました! 地球温暖化してるのに。35°C平然と超えるのに、そんな長野県、僕の知ってる長野県じゃないよ! 二度もぶった! 意味はないけど勢いだけでアムロ発言してみました! 

 子供は大変だなあ、とおっさんは他人事の感想を述べるが、よく考えてみたら今の小学生って、長生きしたら22世紀まで行くのだった。

 その時に八月三十一日がどういうかたちをしてるか皆目見当もつかないが、こういう訳のわからないことを考えられる日々が来るといいね。そうか。僕は22世紀見られないんだな、間違いなく。

 夏が今年も終わる。のび太くん、宿題はやったのかい?


  ガラス透け水と千春の夏終わる  大祐

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