1,001のプラトー 〜強度になること、動物になること、知覚しえぬものになること……

「なろうとしたもの」は畢竟「なってしまったこと」でしかなく

 

 九月二十四日

 

 ハローエブリバデー! トゥデーもヘヴィなデーをユーアータイアード! 今日にベリーフィットなゴキゲンなナンバーはこいつだ!

 

 和田アキ子 「愛して」

 

 『翔べ! 必殺うらごろし』からのセレクトだぜベイベー! うらごろし、アッコももちろんレギュラー出演、殺しの手段が「腕力で殴殺する」と言う必殺史上でもあんまり見ないシンプルかつディープな「どちらかというと、こういう最期は迎えたくないな」と悪人なら思うはずのやつ。

 ちなみにうらごろし、後は全力疾走してくる中村敦夫のブブカみたいなクソ長い槍(旗付き)で串刺しか、市原悦子が道端でぶつぶつ呟いているので何だろーなー、と思って近づくといきなり短刀で腹をずぶ、でそのあと悦子が「あああ、あたし、やってしまった!」て感じの凄まじくリアルな表情するとか非常に「嫌」な手段しか選択肢がない。

 いろんな意味でヘヴィな必殺シリーズと言えよう。(意味深)

 僕も「中八がそんなに憎いかさあ殺せ」と言う川柳を作った分際、必殺シリーズの末席に連なるもの(のわけがない)として、ヘヴィな句集を作りたくて『リバー・ワールド』と言う本を今年の春に出した。

 1001句収録した。

 これは多い。

 馬鹿みたいに多い。句集って、普通は250句前後、多くて450句くらいが目安とされる。なのに1001句。馬鹿じゃなかろうか。て言うかもはや体を張ったギャグである。

 当然本が厚くなる。郵送することもあるのだが、まあ封に入らない! ポストに入らない! 誰のせいでもない自分が小さ過ぎたから、小田好きなのか自分。と言うことはどうでもよく何でこんなボリューミー&ヘヴィなものを作ったかというと、ドゥルーズ&ガタリである。

 大学の図書館で『千のプラトー』を初めて手に取った。面白そうだった。だって「一九四九年——狼はただ一匹か数匹か?」、「BC一〇 〇〇〇年——道徳の地質学(地球はおのれを何と心得るか)」、「誰も、自分一人で、または他人と、他人たちと一つの器官なき身体を構成することなしには、愛をこめて交わることなどできない」だよ? 面白そうじゃん? ホット&クールじゃん? と、ページをめくって途方に暮れた。

 読めない。

 どうも隣に並んでる『アンチ・オイディプス』とか言うのの続編らしい、と言うことは何となく知っていたけど、そっかー、アンオイ読まなきゃいけないのかー、でもオイディプスって何か苦手なんだよね、天国良いとこ一度はオイディプス。今最低のこと言いましたよ。などと現実逃避しても読めないものは読めない。

「意味がわからない」ならまだわからないことがわかる。「これが何か」と言うことがわからなかったのだ。

 ウスボンヤリとしてるけど、この二冊手に取った人ならわかって(!)もらえるのではないだろうか。あ、文庫版じゃなくてハードカバーのやつね。

 だからもう、あの本の「厚さ」をずっと忘れないまま生きてきた。

 何度も読もうとした。

 大学から帰郷して、まあ田舎の本屋には売ってない。て言うか本なんて売る気も買う気もないんである。Amazonもあったかなかったか、僕はパソコンも持ってなかったしスマホもない時代じゃったからのう。げほげほ。

 と思ったら『アンチ・オイディプス』の方はブックオフに売っていた。100円で。20年前のこと。流石にこの時はこの国やばいところに向かってるんじゃないかと思ったが、現在見事にそうなりましたね、はい。

 で、『千のプラトー』はちょっと離れた地方都市で高い金払って(貧乏なのはずうううううっと変わらない)、書棚に並べたものの、読めない。読まないのか読めないのかも分かりたくないまま、時が流れた。わからないまま時は流れて。うるさいですね。

 そして読んでいた。

 20年かかったけど、二冊読み終えたよ。自分、『カラマーゾフ』読了に10年かかったけど、それを上回る歳月。思えば遠くに来たもんだ。

 感想を言うと、面白かった。いや面白い、で済ますのが80年代のしょうもなさなんだろうけど、何かに決着をつけられた気がする。内容説明しろ、って言われたらあー、ささがけごぼー、とか馬鹿のふりして(しなくても充分馬鹿だが)誤魔化すしかないくらい、理解はしていない。ただ純粋に「読む」という体験を通過したのである。うわ頭の悪い文章。

 感動した、ではもちろん無いだろう。おもしれー、でいい気がする。ていうか啓蒙しようとか微塵も思ってねえだろこいつら(D&Gのコンビね)って意をビシバシ感じた。

 で、『千のプラトー』みたいな本が書きたいな、と思ったのが『リバー・ワールド』の裏テーマだったんである。うらごろし。どうでもいい。千に対してこっちは1001句。すなわち一句分だけ勝った! と意味のない一人相撲をしている。頑張れ御嶽海、やっぱ照ノ富士にトラウマ持ってんだろうか。はほんとにどうでもいい。

「一人相撲最強」を目指した川柳句集『リバー・ワールド』、アッコさんのパンチくらいヘヴィです。よかったら買ってください。今日は宣伝ですよ、商業主義ですよ、これが資本主義と分裂症というやつです。笑って許して。あ、妙に着地した。それではまた。

 

  分離する劇場に花田氏の花  大祐


 参考→ リバー・ワールド:Amazon

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