リバー・ワールド (part 2)


あらゆる偶然はあらゆる意味に回収されてしまうから

 

十二月三十日

 地球のかなりの人が、2021年も終わりと思っているのではないだろうか。思っていない人も相当数いる。はず。

 というわけで2021年の自選句とかやればいいのかもしれないが、結局何句作ったんだ? 手帳を数えたら今日までで6,454句書いていた。

 あれ、あ、案外少ない。結構がんばって書いてたんだけどなー。てよく考えたら句集出したんだった。『リバー・ワールド』と言います。書肆侃侃房さんからです。たぶんまだAmazonで買えます。買わなくていいから、と言うのは嘘だけど、半分本気で買わなくていいから読んでみてください。これは完全に押し売りというか、作った人間のエゴです。そういうエゴが人類を重力の井戸に……とかそういう句集でもある、かもしれない。たぶん。

 だけど、この「作者のエゴ」、押し通すには物凄い体力と精神力使ったし(頭脳は実は副次的に使わざるを得なかった、くらいの感じ)、出版後、抜け殻になってた。

 2019年〜20年の句をまとめたのだけれど(こう書くと非常に古い時代の川柳な印象を受ける)、本が出たあと、句が書けなくなった。

 もうほんとに、何も出てこないのよ。

 何か出てきても、「あ、これ前に使った手だわ」とか思うしかないアンインストール。これも古いネタだ。あああああああああー。だからしつこい。

 何の話だったかというと、人間、句集を出すと句が書けなくなるもんなんです! そういう生き物なんで自然の摂理です! 春に発売されてから、一日7句書ければいいほう、って日々が長かった。自分が川柳書けなかったら意味がねえじゃん。と思いつつ倒れていた。飛ばない豚はただの豚だ。どうでもいいことに気づいたけど、「とんでる」というギャグだったのですね、紅の豚。

 と現実から目を逸らしたくなるくらいひどい状態だった。いやあの、本出せたの、幸せでした。ただ、その、毎日の句がね、なんかもう思いつかなくて。自分、このまま終わりかなーとか真剣に思っていたし、今でも実はちょっと思っている。ちょっとだけね。

 なんだろう、書けないと書きたくなる。

 というか、書かないでいると書きたくなる。それがどんなにどうしようもない句でも。

 秋頃から、一日のノルマを14句から28句に上げた(この数字は手帳の行数の加減)。それで質が下がったかどうかわからない。わからないことだけがわかった、なんてソクラテスしてる自分はあんまり好きじゃない。自分が好きじゃなくて、でも自分がどうしようもなく自分に囚われているから、「本を出す」なんて無謀なことをしてしまったのだろう。無謀キャプテン、個人的には好きでしたよ。毎月立ち読みするくらい。なんのこっちゃですが、「無謀キャプテン 羊頭狗肉」でググってみましょう。

 で、立ち読みでいいから『リバー・ワールド』読んでくれ、ってとこでオチ付けようとしたんだけど、これはなあ、繰り返すけど「エゴ」なんだよ。エゴの無い作品なんて作品ではないのかもしれないが。どんなエゴなのか興味あるかたは読んでみましょう。うわどうしてもそっち行くか自分。嫌な奴だ。

 ただ、2021年も終わろうとして、やっと自分が「何か次のことをしよう」って思えてきた。note で有料配信しようとしたりね。https://note.com/16monkawai/ で近日公開。ビビリなんで、なんか気がひけるけど、まあ、宣伝社会だ。だけどブログとかに広告入れたくねーとかも思うのです。これがぎりぎりの「エゴ」の在り方。

 ともかくも、一年が終わる。

 今日、きんとんを作りました。栗は高いので入れてないです。芋はもらいものです。具体的なことを書いてみました。

 ともかくも、一年が終わる。

 かかわってくれたすべての人にありがとうございます。こんないい加減なブログで言っても説得力はないですが、すべてのひとがしあわせになることを。しあわせであることが一つの不幸だとしても。感謝を込めてすべてのひとのために自分ができる何かを。何もできなくてもその願いだけを。どこかに保ち続けてゆきたいのです。

 だから僕は川柳を作ります。

 ともかくも、一年が、2021年が終わる。つらかったことを、うれしかったことを、どうでもよかったことを、僕はいつも忘れてしまう。僕の目の前には手帳とシャープペンシルと、わずかのジャック・ダニエルズがある。だから、というのもおかしいけれど、だから、書く。

 よいお年を。

 僕は、しあわせだった。

 ありがとうございました。

 

  『リバー・ワールド』より

   手術中「都大芸大」なる寝言

   関脇のタイムトンネル掘るちから

   マスオの子偽薬すぐさま吐き出しぬ

   月面車車体に渋谷さんと書く

   キーパーだけである

   輪廻する女子高生に石つぶて

   雪が降る潜在意識美術館

 

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