写真に関係のないものを、世界から |
一月九日
日曜日も暮れ、千春さんとスタバに行く。
もう店員さんに顔覚えられてて、「アイスコーヒー、トールですね!」と先手打たれる。すんませんいつもありがとうございます。
さらにこちらが何も言わないうちに、千春さんへ「そしておかわり券でホットのディカフェですね! ありがとうございます!」。プロってすげえ。
「何かこう」
席についてしばらくして、千春さんが言った。ソニー・ロリンズが流れていたかどうかは覚えていない。
「デートらしいこと、してないね」
「してないね」
「しようよ。デートらしいこと」
「よーし、じゃあ、僕の今日の筋トレのメニューを振り返ってみよう!」
「そういうんじゃなくて」
「何かあるかな。ほかにデートらしいこと」
「あるよ! いっぱいあるよ! 何が悲しくてあなたの柔道プッシュアップとか見なきゃならないのっ!」
「じゃあ、なんだろう」
「しりとり、とか」
「え」
「しりとり、しよう。デートらしく」
「それ、デートかなあ。ふたりとも四十代で、僕は今年年男なんだよ」
「いいの。やろう、しりとり。私から。蕎麦、そば!」
「バチ」
「ふっ。ちで来たね。返し技だあ。父、ちち」
「中間値」
「……うっ、地理」
「理知」
「もう! そういうんじゃなくて! あーでもやる。地下。ちか」
「価値」
「うー。うー。うー。これならどう? チーズ(ドヤ顔)」
「ずんだ餅」
「……大祐くんなんかきらいだあー」
嫌われてしまった。「千春」と言わせたかったのに。そう言ってきたら、「ラヴ。」と告白して「もーそれしりとりじゃないよー」といちゃいちゃする完璧な計画が崩れた。
こんなことを世界中に発信しているのは、かなり頭がいかれていると思う。
話は戻りますが、しりとりの一点集中攻撃、こちらのペースで相手を追い詰める、グラップリングにおけるガードポジションみたいな戦法なのでおすすめです。何をすすめている。
「私は、普通のしりとりがしたかったのに……」
と言われる危険性もあるので注意しましょう。ふつうってなんなんだよとは悩む。
帰り道、車で「ロ・ロ・ロ・ロシアンルーレット」を流していたら、いつもの通り「もー、なんでこの曲なのー」と抗議される。
「この曲、知ってるの?」
「知らないけど」
知らぬが仏。いやダーティペアはそんないかがわしいものじゃないです。見方によっては、たぶん。
と言いつつ千春さん、
「ふん、ふんふふん〜」
と鼻歌で中原めいこに合わせていた。良い傾向である。これが愛とかいうものですよ。知らんけど。
良い一日だった。明日も良い一日になるといいね。しかしこうやって文章化してみると、「馬鹿」なのではないだろうか、自分。あ、「ん」がついたので負けて寝る。
息を吸うパーコーメンが在る町で 大祐
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